この作品は、1977年の初版より現在までに100回ほどの刷りなおしがなされた名作であるが、これが名作たる所以は、物語のテーマともなる“たいせつなこと”が明示されておらず、読み手が考え続けなければならないところにあると私は思う。
このように、答えが「これだ!」と決まっていない内容のものについては、親として、教師として、次のようなオープンエンドな問いかけをしてあげることが、こどもたちの教育には大切だろう。
・この主人公は、何回生まれ変わっても、そばにいる人が好きではない(自分の人生が好きではない)けれど、それはなぜだろう?
・何回でもねこが生まれ変わったのは、なぜだと思う?
・白いねこが死んでしまったのは、なぜだろう?
・「生まれてきたものは、みな幸せになる権利がある」って言葉があるけれど、それを考えながらこの本を読むと、どう感じる?
・「自分が一番好き」な時には、死ぬことさえなかったのは、なぜだろうか?
などなど。
本の内容理解の深さ、答えは、もちろんこどもたち各々の経験ともつながりをもっている。そのため、答えが少々変でも焦る必要はないが、あまりにちんぷんかんぷんなことを言っていたら、字は追えていても理解にはつながっていないと考えよう。様々な読書や経験の後で、何度でもその本に戻ってくるのが良いと思う。
何才になっても、大人でも読む必要があると記したのは、そのような見解からだ。
『100万回生きたねこ』
佐野洋子・作
薦めたい学年:1年生後半〜いつまでも
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